なんでもないこと、みーっけた

飽きずに綴っていけたらいいな

2018/2/23(金)夜:TERROR

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舞台を観てどう感じようとどんな印象を受けようとどう解釈しようとそれは自由だと思うし、例え何も感じなくても、何も考えなくても間違いではない。

と、思っているんですが、【TERROR】は、「考えることを強いられる舞台」だなと。「考えさせられる舞台」は数あれど、こんなに「考えることを強いられる舞台」ってなかなかない気がします。まあ言うほどめちゃくちゃ舞台観てるわけではないけども。

もともと松下さんのファンをゆるくやっ……てるって言うには最近全然観てない私ですが、好きな俳優さんのひとりではあるので、松下さんが出るなら!ってことで観に行くことに決めたTERROR。あらすじ読んだだけでも重い。重すぎる。判決が観客に委ねられると聞いて、ますます重い。気軽に観に行ける感じじゃない。最近はミュージカルばっかりだったから久しぶりのストプレ。どんなかなあと期待と不安が入り混じった感じで行ってきました。


始まってすぐに感じたのは、巻き込まれてる感がすごい、ということ。しのごの言わずに巻き込まれている。日本語おかしいけどニュアンスで受け取ってほしい。舞台上への連れ去りとか絡みがある演目はあるけど、それでも全員に絡んでるわけでもないし、観る側と演じる側ってわりときちんと線引きされてると思うんですけど、TERRORはもう問答無用で客席全体を巻き込んでる。客席の照明が真っ暗になることがほとんどないから、客席が視界に入ってしまう。はじめは客席が見えたり明るすぎるのがストレスだったけど、気づけばそこも含めて舞台装置みたいに感じられて、TERRORの世界に入り込んでいました。

気が短い私は裁判長の長ーーーい話に、もう!早くして!とイライラしたりしましたが!(観劇向いてない)

どんな順番で裁判が行われたか、正直あまり覚えていません。ただ、ひとりひとりの主張だったり想いだったり問いだったり……そういったものがズシンとのしかかってくるような感覚でした。

その中でもやっぱり印象に残っているのがコッホ。淡々と語ってはいるけれど時々声が震えていて、撃墜した飛行機の様子を事細かに言葉にしていく時はもう本当にこれ以上聞いていたくなくて、耳を塞ぎたくなりました。自分が行ったことをしっかりと受け止めている。何も感じていないわけではない。何も感じていないわけがない。自分の行った行動が正しいという認識変わらずとも、164人の命を奪ってただ平然と生きているのではない。ただただ、平静を装っている。撃墜の瞬間を何度思い出しただろう。4人の人間が機外へ投げ出されていく情景を、何を思って見ていたんだろう。そんな想いをこちらに抱かせるような姿で、静かに、しかし強く言葉を連ねていくコッホ。コッホは負けてはならないと松下さんがプログラムで語っていましたが、コッホが悔いてしまったら全てが意味のないものに変わってしまう気がしました。罪を悔いて償う意思を見せるくらいならはじめから撃ち落とす決断なんてしないよな、と。だからコッホとしての在り方はあれで正しいと思いつつ、遺族の気持ちを思うと……。


コックピットに押し入ろうとしていた乗客たち。それを、夫からのメールで知っていた女性、フランツィスカの証言も、胸に迫るものがありました。何も言えません。ブルブルと足を震わせながら必死に言葉を繋いでいく彼女の話を、ただただ呆然と聞いていました。


迷いに迷った投票タイム。

結局、私は有罪に投票しました。心の底から彼の無罪を祈りながら、泣く泣く黒のボックスに赤いカードを投じました。どうしても松下さん贔屓で観てしまって、どう頑張っても最後までフラットには観ることができず。松下さん贔屓だからこそ、公平に考えなくては!という気持ちが強すぎて逆に厳しく判断してしまったような気もします。コッホの演者が違う人であれば、また結果は違ったのかも。

ここで有罪になれば、テロに屈したことになる。民間人を利用するテロリストを増長させてしまう。そもそも撃墜させてはならないという憲法はあれど、彼を罰する法的根拠はない。無罪に入れていいんだよと許してくれる(という言葉は適切ではないと思うけど、無罪に入れたかった私にはそう感じられた)弁護人の言葉に揺れました。でも、ここで無罪になれば、また同じ悲劇が起きるのでは?撃墜することを前提に、スタジアムからの退避を怠る事態になるのでは?有罪になれば、その未来は変えられるかもしれない。そんな想いが、検察官の論告を聞いてから離れませんでした。実際、コッホ自身に責任はあれど罪はないと今でも思ってしまいます。スタジアムから退避させなかった人間たちに罪があると。コッホが撃墜せずに旅客機がスタジアムにそのまま突っ込んでしまったら。7万164人の犠牲が出てしまったら。何度やり直せるチャンスがあったとしてもコッホは撃墜するとは思いますが、もし、万が一コッホが躊躇ったとしたら……軍内で責められるのはコッホではないですか?何故撃たなかったんだと、あの管制塔内にいた人間なら誰もが思うのではないですか?世間からのバッシングも、軍や国防長官だけにのみ向けられることにはならないないはずです。撃たなかったコッホ自身にも向けられるでしょう。撃墜したことを罪とするのなら、スタジアムに突っ込んだ時には誰の罪になる?そりゃもちろんテロリストが悪い。でもこの結果を招いた責任は誰が取るのか。不幸な事故として終わらせられるわけもない。……そんなことをグルグルと、足りない頭で考えてしまう舞台でした。

無罪244票。有罪231票。

決して偏らない得票数に、この舞台の全てが詰まっているような気がしました。





とまあ色々書いてはみましたが、基本的に何見ても、きゃ〜〜かわいい!!!しか思わないミーハーミュオタの頭をフル回転させるなんて、すごい舞台だな!!笑
カテコのあと捌ける時に橋爪さんがちょっと止まって何かしようとして、でも何もせずに歩いて行ったの見て笑う素の松下さんほんと可愛かったのでレポ描きたいとも思ったんですけど、蛇足すぎるのでやめました。笑