なんでもないこと、みーっけた

飽きずに綴っていけたらいいな

ミュージカル<47>感想と個人的解釈

47(さちる):消防用語のひとつ。無線での連絡時に「46(わかったか?)」「47(わかった)」という意味で使われる。

 

<あらすじ>

 ウォンチョク消防署で消防装備の点検を任されているアン・ジョンウォン。以前は現場に出て活躍していたジョンウォンだったが、今は消防行政科に所属し内勤の日々だ。そんなジョンウォンの元へ、義務消防時代の後輩、カン・イジュンがやってくる。同じ消防署に派遣されたイジュンとの再会を喜ぶジョンウォン。義務消防隊とは消防士の援助を行う兵役の軍務のひとつであり、ふたりはそこで先輩後輩として苦楽を共にした仲だった。義務消防時代の救急日誌を一緒に読み返しながら、当時の想いを馳せるジョンウォンとイジュン。そんな中、出動要請が。初出動だと気合いを入れるイジュンはジョンウォンに一緒に行こうと言うが、内勤中のジョンウォンは行けないと首を振る。しかしイジュンにせがまれ、結局はジョンウォンが運転するという形で付き添うことに。内勤の身で勝手に現場に出ることは許されていないためバレないように神経を尖らせるジョンウォンだったが、内心は軍隊時代に可愛がっていた弟分との初出動に心躍らせていたのだった。夢見ていたイジュンとの出動、そしてまた共に働く日々。大変ながらも充実した毎日になる、そんなはずだったがーー。

 

<ネタバレなしの感想>

 消防士ものとして期待しすぎていたのもあって、正直少し、物足りなさはありました。消防士としての職業に視点を当てた作品というよりもトラウマや内面を描いた作品という印象で、消防士じゃなくても成立する作品というか、個人的にはもっと消防士ならではの活躍場面や葛藤シーン、バディの設定を生かす演出が欲しかったなと。でも、火災現場や事故現場はとてもリアルで、公式からも警告が出ているのがわかる程の演出になっています。事故や火災に関して辛い記憶がある方や暗闇、音に敏感な方は観に行かない方がいいと思います。内容としては過去と現在が行ったり来たりするのでわかりづらいところがあって韓国の方でもかなり細かい解釈が分かれている印象ですが、この場面がどうこうと正確に理解する必要はきっとなくて(そもそも正解がわからないし)、全体的な大まかな流れは難しくなかったです。正直混乱する部分はありましたが、ざっくりとした内容は大丈夫じゃないかなと。劇中は思っていたよりも笑えるシーンがあって、義務消防時代のふたりのやりとりはアドリブも満載で面白かったです。ナンバーも、ビッグナンバーといえるような曲はないですが、心地良くてずっと聞いていたくなるナンバーや、切なくて苦しくなるようなナンバーもあって好きでした。

 

<俳優さんごとの感想>

アン・ジョンウォン役:ビョン・ヒサンさん

⇒ものっすごく、良い!!!イーライで見た時に気になってて、この俳優さんまたどこかで見たいなあと思っていた方でした。さちる自体はほんぎぼむが出るという理由で観ることを決めたのですが、ほんぎぼむの出演日と予定がなかなか合わず、ほんぎぼむなしで観るならヒサンさんで観たい!と思ってキャストを選びました。結果、大正解だったなと。別の2名は結局観ることができずに終わりそうなので言及できませんが、ヒサンさんのジョンウォン、めちゃくちゃ良かったです。軍隊時代に万年マンネでずっと下っ端をさせられてる状況を歌っている曲があるんですが、やさぐれていくっぷりが面白すぎて。その後イジュンが入ってきたことがめちゃくちゃ嬉しいけど嬉しさゆえに先輩ヅラしすぎる場面、なんとか先輩らしくキリッとした顔を保ってはいるけれど実際は踊り出しそうなくらい嬉しさがに滲み出てて面白いです。ヘタレ感あるのも憎めない。先輩としての威厳はないけど、責任感あるし情に厚いし何やかんや頼りになって、かっこいいヒョンです。こんな先輩がほしいなあ~~!歌も上手いし、後半のシリアスな場面での表情の変化もよかったです。さちるもう一回観る機会があるならぜひヒサンさんで観たかったなあ。

 

カン・イジュン役:ホン・ギボムさん

⇒かわいい~~~~~~~~!!!!知ってた~~~~~~~~~~~~~!!!!!顔が良いって最強ですよね。ずるい。アンナ・チャイコフスキーでアンサンブルながら顔の良さが光ってたほんぎぼむ、イーライで垢抜けて、ビースティでますます磨きがかかった気がするのですが、さちるのイジュン役はまたあざとかわいくて死ぬかと思いました、私が。あんな顔でヒョンって呼ばれたらヒョンとして何でもしてあげたくなっちゃいますよね……(何の立場)手で目元を拭いながら泣く場面がかわいすぎて、その場面だけスペシャルカーテンコールしてほしかったです。(無理だよ)なんかもうかわいさ爆発してるので、みんなほんぎぼむ観に行ってほしい。制服がまた似合う。カテコでヒサンさんが運転する場面があるんですが、私が観た回はほんぎぼむイジュンが任されてて、運転に不安がありすぎてかわいかったです。(何でもかわいいやつ)運転の仕方をいちいち聞いてて、途中で隣りからヒサンさんのジョンウォンがアクセルを踏みだした時は笑ってしまいましたが。とにかくめちゃくちゃかわいいイジュンでした~!!

 

 

ここからはネタバレです!

私なりの解釈なのでもちろん違う考えの方もいると思うし、そもそも記憶違いの部分もありそうで自信があるわけではないですが、自分の考えを整理するついでに書き残しておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言うと、イジュンは過去に火災現場で殉職しているんですよね。なので現在のジョンウォンのそばには存在しないことになります。まだ生きていた頃に交通事故現場でトラウマを負ったイジュンは精神的に不安定になってしまい、ジョンウォンはそれを克服させようと乗り気ではなかったイジュンを連れて火災現場に行くのですが、そこで爆発が起きてイジュンは亡くなってしまいます。弟分として心から可愛がっているイジュンの死。それも自分が無理に現場に連れて行ったことで失われてしまった命。その事実に耐えられず、心が壊れたジョンウォンはイジュンの死そのものを忘れてしまいます。それと同時に辛かった記憶すべてを封印してしまったのか、過去に救えなかった人達のことも自分の都合の良いように歪曲してしまいます。無意識のうちに。劇中、今までの出動記録が残してある救急日誌を読みながら、確かに救ったはずの人たちが救助失敗という形で書かれていることに疑問を抱く場面があるのですが、そういった感じで少しずつ実際の過去と自分の記憶が近づいていき、最終的にイジュンの死を思い出すことになります。最後の場面に行きつくまでに過去と現在が行ったりきたりするため混乱しやすいのですが、どこが過去でどこが現在、そしてどれが幻覚なのか。ここが観る人によってかなり解釈が分かれる部分ではないかと思います。現に同じ回を観た友人とも解釈が違っていて、感想を漁ったところ韓国の方でもかなり解釈がバラバラのようでした。私自身、今これを書いている現在もひとつの解釈で固まっているわけではなく、2パターンの解釈があります。ただもちろんこのどちらかが正解だと押し付けるわけでもなければ他の方の解釈を否定するつもりもないので、一意見として読んでもらえたら嬉しいです。

 

1.消防署に派遣されてきたイジュンは存在せず、全てが幻覚

 イジュンのトラウマとなった交通事故現場もイジュンが殉職した火災現場もすべて義務消防時代の話であり、職業としての消防士になったイジュンは存在せず、全てジョンウォンにとって都合の良い夢のようなものだったという解釈。最初に観た時は、こう感じました。ジョンウォンはイジュンが夢だった消防士になれずに死んでしまったという事実に耐えきれず、”消防士になったイジュン”という幻覚を見ることで心を保っているのではないかと。

 

2.消防署に派遣されてきたイジュンは過去に存在していて、それを現在のジョンウォンが追体験している

 イジュンは消防士になっていて、消防士時代に交通事故現場でトラウマを負い、火災現場で亡くなった。心を病んでしまったことでその過去を忘れてしまったジョンウォンが、幻覚のイジュンと一緒に過去を追体験しているという解釈。

 

 どちらの解釈にせよ、現在のジョンウォンの元に現れた<消防士になって派遣されてきたイジュン>は幻覚だと感じました。その場に存在していない、という意味で。内勤をしている=イジュンを失って心が壊れてしまったジョンウォンですが、そこにやってくるイジュンとは<内勤をしているジョンウォン>という前提で話が進むんですよね。最初に観ている時はイジュンが死んだことは知らないので単純に<内勤をしているジョンウォン>と<派遣されてやってきたイジュン>が再会しても何の違和感もないのですが、ジョンウォンが内勤になった理由を考えるとそのふたりが同時に存在すると時系列的に矛盾が生じるので、冒頭の再会部分からすべて幻覚なのではないかと思ったんですよね。その後イジュンの消防士としての初出動の際も、イジュンの無線に上司が答えない場面があって、ジョンウォンの無線には返事が返ってきます。ジョンウォンはイジュンの言い方の問題のように言っていますが、そもそもイジュンが幻覚とすると上司には最初からジョンウォンの声しか届いてないことになるので当たり前です。何故お前がそこにいるんだと問う上司は<内勤なのに現場に出ていることを責めている>ように見えますが、イジュンと一緒に現場に来たと返したジョンウォンに対して間があったことや、帰ってこいとだけ返されたのも、実際は<今現在起きているわけではない過去の事件現場に行ったジョンウォン>に対して何故そこにいるか疑問を持ち、もういないイジュンの幻覚を見ているジョンウォンに対して何も言えなかったのかもしれません。

 そういうわけで私の中で現在のジョンウォンの元にやってきたのは幻覚のイジュンで確定しているのですが、だとしたらイジュンが消防士になった事実は過去にあるのか、それとも全てジョンウォンの願望ゆえの幻覚なのか。前述した通り私は全て幻覚であり消防士になったイジュンも全て存在しないと思っていたのですが、友人と話している内に「そうじゃないのかも」と思い始めました。

 劇中でふたりが出動した現場がいくつかありますが、その中の<イジュンのトラウマとなった交通事故現場>と<イジュンが殉職した火災現場>は確実に存在する過去です。私はこれ自体が義務消防時代に起きたことだと思っていたのですが、この事件たちが明確にいつ起きたのかの描写がない上に過去と現在が行ったり来たりしているため、解釈は様々のようです。私のように義務消防時代の話と感じた人もいれば、消防士になってからの話と捉えてる方もいました。どちらかというと後者の方が多い気はします。私は消防士イジュン(幻覚)とやりとりをしている時のジョンウォンは<現在>に見え、上記のふたつの事件のジョンウォンが<過去>に見えたんですよね。現在のジョンウォンは内勤という前提があるけど、過去のジョンウォンは内勤じゃなくて当然のように現場に出ている。なので交通事故現場にせよ、火災現場にせよ、現場にいるのは過去のジョンウォンだと。だから義務消防時代の話と思ってたんですよね。ただ、交通事故でトラウマを負って内勤を願い、消防士(義務消防時代であれば、消防士になるのを)をやめたがっているイジュンの「内勤になるべきはヒョンの方なのに」という台詞でよくわからなくなりました。私の中での前提が<内勤になる前の過去のジョンウォン>と<内勤になっている現在のジョンウォン>の2パターンだったので、交通事故現場は義務消防時代の話だった⇒内勤になるべきと言われる理由がない、交通事故現場は消防士になってからの話で幻覚のイジュンに言われた⇒もう内勤している、という矛盾が生まれてしまい……。正直、こんな風にサクッと結論付けられるわけでもなさそうなんですよね。全編を通してジョンウォンの頭の中を見せられてるのかなと思うことも多くて、頭の中ゆえの混沌っぷりなのかなとも感じていて(歪曲された記憶も多々見せられるし)、なので矛盾があって当たり前だなとも思ったり。書きながら自分でもますます混乱してきたのですが、それでもせっかくなので自分なりに結論付けていきたいと思います。

 どちらかというと消防士になったイジュンという事実がなくて全てジョンウォンの願望が見せた幻覚だった、という結末の方が好みなのですが(そんな幻覚を見せるほど夢を叶えられなかったイジュンに囚われていることが切なくて心が痛くて、それがいい)、そう考えるにはちょっと気になる部分もあるんですよね。消防士として再会したイジュンの初出動として消えた<ソミ>を探す描写があるのですが、そこでジョンウォンとイジュンの事件の結末が違っていて。ジョンウォンは<ソミは猫>、イジュンは<孫娘ソミが死んだ>と現場で聞きます。消防士イジュンが全て幻覚なら、歪曲された記憶の描写は必要なさそうですよね。ジョンウォンは救えなかった<孫娘ソミ>のことも、猫だったと事実を歪ませることで心を保っていたのかもしれません。だからやっぱり<消防士イジュンの初出動>自体はあったのかなと。

 あと、私の記憶が正しければなんですが、イジュンの死を思い出した時から、紺だったイジュンのネクタイが銀に替わるんですよね。私は勝手に殉職した消防士が銀色のネクタイで埋葬されるとかかなと思っていて、イジュンの死を表してると思ってたんですが、これは勝手すぎる勘違いでした。調べたところ、2018年から消防士の制服のネクタイの色が銀から紺に変わったらしいんですよね。つまり、2018年のジョンウォンの元に現れたイジュン(紺ネクタイ)は実際には存在しない幻覚だとジョンウォンが気づくことで、過去に実在していたイジュン(銀ネクタイ)に変わったのかなと。そうなるとやっぱり過去に消防士になったイジュンは存在していて、ネクタイの色が変わる前、つまり2018年より前に殉職したというのが自然かなと思いました。

 

 あとラスト!!ジョンウォンが名誉退職して、イジュンと再会するところで終わります。退職の際に1階級特進という言葉も聞こえてきたのでジョンウォンも殉職したんだと思ってるんですが、これも人によって解釈は様々みたいです。私はイジュンとの再会=あの世という描写で、あの世で一緒に楽しく出動しているふたり、という風に見えるんですよね。でもただの夢かもしれないし、そもそも韓国の消防士事情も知らないから殉職も名誉退職と呼ばれることがあるのかもわからないし(調べても情報出てこず)、単純に退職時に1階級特進する人もいるのかもしれない。情報不足な外国人の憶測にすぎませんが、私はそう感じて、もしほんとにそういうラストなら、私は好きな終わり方でした。

 

 と、ここまで書いてみましたが、楽曲リストを見ながら、え?色々合ってる???ってなってるので記憶に自信はないです!笑 もう一回観れたら色々確認できるのになあ~~って思いながら書いてます。自信もないのもそうですが、そもそも自信があったとしても誰かにこの解釈を押し付けるつもりはありませんので!それにしてもさちる未見の方には何が何だかなブログになってしまった気がします。不親切設計で申し訳ない。イジュンの死因は爆発がきっかけではあるだろうけど、元々残量が少なくなっていた酸素ボンベを持ってきてしまった+パニックで呼吸が浅くなったことで通常以上に酸素を早く消耗したことによる酸素切れなのかなとも思ったり。すぐ近くにいたジョンウォンが無事だったことも踏まえて。それにしてもあの場面、不安に押しつぶされそうになりながらもジョンウォンを信じて付いてきた結果なのがまた辛い。強引だったとはいえ最後までイジュンのことを気にかけてたジョンウォンだったからこそ……。書きながら色々想いも溢れて来ますね。自分で思っている以上に私、さちるが好きな気もします。さちる、また観たい。また何か思い出したり考えが変わったりしたら書き足します!